電子書籍についてぼくが思うこと。(1)

kindle Paperwhite(2013)を購入してから本格的に電子書籍を使い始め、2年以上経ちました。

この2年の間にkindleの本などをたくさん購入したり電子書籍について調べていました。

その中で、いろいろ電子書籍について書いておきたいことがあり、そのことについて何回かに分けて話していきたいと思います。

本記事では電子書籍ストアで販売されている電子書籍についてです。

Kindle Paperwhite (ニューモデル) Wi-Fi

Kindle Paperwhite (ニューモデル) Wi-Fi

電子書籍とは

まずは電子書籍の紹介から。

コトバンク(リンク)より引用すると、電子書籍とは

コンピューターなどで読む文章を中心とした電子出版物のこと。

と記されています。

この定義に沿ったものを考えるとたくさんの電子書籍が考えられます。

その中でも本記事ではきっかけとなったkindleなど、電子書籍ストアで販売されている電子書籍(以下簡単のため電子書籍とする)について書いていきます。

メリット

まずはメリットについてです。

いつでも読み始めることができる

今はもう少なくなっているけど、電子書籍を勧めるとまず言われるのが「専用端末をわざわざ買うのは…」という意見です。 基本的にどの電子書籍ストアでも、無料のアプリやソフトがあって、手持ちのパソコンやスマートフォンで読むことができます。

ぼくはkindleをよく勧めるのですが、kindleは専用端末がそれなりに広く普及しており一般に知られているため、他の電子書籍ストアに比べてこの意見を言われることが多くあります。

以下にいくつかの電子書籍ストアの対応状況をまとめておきます。 スマートフォンのOSはAndroidiOS、パソコンのOSはWindowsOSXを想定しています。

電子書籍ストア ブラウザ アプリ(スマートフォン) アプリ(パソコン) 専用端末(液晶) 専用端末(E-ink)
kindle *1
kobo *2
eBookJapan
BookLive! *3
Book☆Walker
Reader *4
品切れがない

電子書籍には、品切れが無いという利点もあります。 デジタルコンテンツのため、紙に印刷するのに比べ複製・出版が容易となっています。 ただ、この点に関しては、デメリットの売ってない作品や配信の遅い作品があることに関連してくるので、そちらもお読み下さい。

紙媒体に比べ、安い

紙媒体の本には再販制度(定価販売制度)があります。この再販制度とは、日本書籍出版協会(リンク)より引用すると

出版社(メーカー)が個々の出版物の小売価格(定価)を決めて、書店(販売業者)で定価販売できる制度です。

と記されています。 なぜこの制度があるかという件については、今回の内容ではないため割愛させていただきますが、この制度があることにより本は値下げすることなく一律の価格で売られています。

一方で電子書籍には再販制度がありません。日本出版者協議会は公正取引委員会に対し再販対象に電子書籍を追加することを要望しましたが、公正取引委員会は要望に答えられないという見解を示しています*5

そのため、電子書籍ではよくセールを行っています。 例を挙げますと、koboは先日いつでも*6ポイント20%還元を行うことを発表しています*7

期間限定ではかなりの大型セールを実施することもあります。 Book☆Walkerでは以前88%ポイント還元セールを行っていました*8し、 kindleでも一部の本50%ポイント還元セールを行っていました*9

劣化しない、かさばらない

セールに関して、古本屋などに行けば安く紙媒体が買えるという反論もあります。 しかし古本屋で売っているものは古本であるため、綺麗な本をいつでも買えるわけではありません。 電子書籍はデジタルコンテンツのため、劣化しないという特徴があります。

更に、多くの電子書籍ストアでは購入した書籍はクラウドに保存されるため、何度もダウンロードすることや、複数のデバイスにダウンロードすることができます。

個人出版されている本がある

kindlekobo、Book☆Walkerなどはインディーズに対してのサポートも行っています。 そのため、本として紙媒体で出版されていない本や、もう絶版になってしまった本などを作者が売ることがあります。

意味の検索や、拡大縮小などができる

これも電子書籍だけの特徴でもありますね。 多くの電子書籍ストアで購入された電子書籍では、長押ししてわからない単語などを調べることができます。 また、洋書などでは、単語を長押しすることで意味を確認することもできます。 小説などが特にあてはまるのですが、文字の拡大縮小などができます。 小さな文字が読みづらくなって本を読むのをやめた人の中には、この機能によって本を読むことを再開する人もいるよう*10です。

古典的名作などは無料で読むことができる

青空文庫に登録されている本はkindlekoboなど多くの電子書籍ストアで本として無料で配信されており、読むことができます。 そのまま青空文庫で読めばいいと考えられますが、普段使っていないもので読むよりも慣れ親しんでいる電子書籍アプリで読むほうが読みやすいと思います。

デメリット

次はデメリットについてです。

売ってない作品や配信が遅い作品がある

以前よりは少なくなっていますが今でも電子書籍ストアは複数あります。 自社の販売ストアで売ったほうが売上が多く入ることから、差別化を図るためにラインナップを変えていることがあります。 例えば、KADOKAWAが経営している電子書籍ストアBook☆Walkerではソードアート・オンラインの原作小説を売っています。しかし、他のストアではソードアート・オンラインの原作小説は(今のところは)売っていません。

また、最近では同時発売も増えてきましたが、紙媒体の本を買ってくれる人を優先するために電子書籍を遅くするなんてこともあるようです。 この件に関しては、ぼくがKindle PWを買った当初から言われていましたが、今では幾分かましになっていると体感しています。

手元には残らない

電子書籍はデジタルコンテンツであるため、実際にものがあるわけではありません。 バックアップをとっていたとしても、ある電子書籍ストア専用形式で保存されている場合には使えなくなる場合があります。

電子書籍フォーマットに関する情報は

「2014年電子書籍フォーマットのアクセシビリティ対応状況に関する実態調査」

に詳しく書いてあるので併せてお読み下さい。 また、kindleなど電子書籍は所有権が自分にあるわけではありません。 多くの電子書籍ストアでは、電子書籍を購入した場合に本の所有権がもらえるのではなく使用の許諾がされているだけとなっています*11

以下の表はいくつかの電子書籍ストアごとのコンテンツの所有権を有無を示したものです。

電子書籍ストア kindle kobo eBookJapan BookLive! Book☆Walker
所有権 ✕(第1条Kindleコンテンツの使用。) ✕(第3条B) ✕(第4条4) ✕(第17条4) ✕(第24条3)

更に、採算がとれなくなり電子書籍ストアを閉鎖することもあります。 ヤマダ電機電子書籍ストアが閉鎖*12することや富士通電子書籍ストアが閉鎖*13 することがありました。 Sonyも2014年に北米Readerストアが閉鎖*14されています。

しかし、この件に関しては閉鎖される場合でも今のところは購入した電子書籍が無駄にならないようになっているようです。 先に挙げたヤマダ電機電子書籍ストアではkoboで読めるようにしたり、富士通電子書籍ストアではhontoで読めるようにしています。 Sonyの北米Readerストアでもkoboに移行することができるようにしています。

貸し借りができない

上の手元には残らない点と関連して、人に貸し借りがしづらいような点がデメリットとして挙げられます。 端末を貸し借りすることについては、問題ないようです*15が、電子書籍自体を複製して人にあげることは禁じられています。

アメリカでは、kindleは2010年から許可された書籍に関しては人に貸すことができる制度があるようです *16が、今でも日本でできるようにはなってないようです。 同じくアメリカの電子書籍ストアnookでも人に貸すことができます*17ので、何かしらできるようになって欲しいですね。

突然本の配信が停止されたり、回収されたりする

2015年5月、kindle無邪気の楽園という本が突然配信停止されました*18。今現在でも、それまでに購入した無邪気の楽園の再ダウンロードはできるものの、新たに購入することや次の巻を購入することはできません。 これは、無邪気の楽園amazonガイドラインに反するため配信停止されたようです。

更に前の話ですが、ジョージ・オーウェルの「1984」や「動物農場」といった作品が、kindleにダウンロードされていたものも含め強制的に削除されました*19。 これはパブリックドメイン作品としてkindle本に登録されたものの、アメリカではまだ著作権が保護されているため著作権侵害に値し削除されたとのことです。

電子書籍ストアの規約には突然配信停止することや回収することに関する条項が記載されています。 これも手元に残らないから起こることだと考えられます。

ページを素早く読み飛ばせない

紙媒体の本で、パラパラとページをめくって読むところを探すことがぼくは時々あります。 しかし電子書籍ではスライドバーで移動することや目次から見出しの場所に移動することができるくらいで、適当に本を見るということが少し難しくなっています。 ただ、電子書籍では本の中身を検索することができます。お目当てのページの内容をいくらか知っている場合にはその方法のほうが素早く移動することができます。

紙ではないから目が疲れる

電子書籍を勧めるとこの点も多く言われます。「液晶をずっと見てたら目が疲れてくる」といった意見ですね。確かにその通りです。 しかしながら、この点に関しては、E-inkを使った電子書籍専用端末を使うことで改善できる場合があります。


ぼくは今まで使ってきて、メリットとデメリットを比べても電子書籍の方が使い勝手がいいと感じました。 ぜひ電子書籍をつかったことがないという方は使ってみてください。

電子書籍を推していますが、ぼくは今は電子書籍も紙媒体の本も両方よく買っています。 どちらに絞るのではなく、どちらも使えるという考え方をするのがいいと思いますね。

次の記事では電子書籍ストアと電子書籍専用端末について書いていきたいと思います。

*1:漫画や洋書などは一部は対応。日本語小説は無理。他のストアも一部対応。

*2:以前は販売していた。今は中古のみ。

*3:ただし、2012年発売

*4:ただし、2013年発売

*5:公取委/電子書籍は再販制度に該当せず | 流通ニュース

*6:予告なく終了する場合があるらしいですが

*7:全品20%ポイント還元:楽天Kobo電子書籍

*8:絶頂!常識破りの大感謝祭≪カーニバル≫ | 電子書籍ストア-BOOK☆WALKER

*9:「ジョジョ」ら人気漫画のKindle版がAmazonポイント50%還元セール - ライブドアニュース

*10:読書量が急増 電子書籍がかなえてくれるシニアの夢 |くらし&ハウス|NIKKEI STYLE

*11:電子書籍に欠如する所有権についての理解 - ITmedia eBook USER

*12:ヤマダイーブック「炎上」 電子書籍事業への教訓 (三淵啓自) :日本経済新聞

*13:富士通の電子書籍サービス「BooksV」が9月29日で終了、購入累計額を外部ストア用ポイントで返還 -INTERNET Watch

*14:SONY | eSupport - Reader Store Closure - FAQ

*15:Kindleで買った電子書籍を友達に読ませるのはライセンス違反なのか問題 - カイ士伝

*16:Amazon.com Help: Lend or Borrow Kindle Books

*17:NOOK Tablet™ - Frequently Asked Questions, FAQs - Barnes & Noble

*18:「無邪気の楽園」KindleとAmazonストアから一斉削除。何が起きたのか緊急検証 - エキレビ!(1/5)

*19:Kindleユーザーの本棚から消えた「1984」、Amazonが勝手に削除!? | マイナビニュース