W杯

今年はサッカーワールドカップの開催年である。

にもかかわらず、あまり盛り上がってないように見えるのは気のせいであろうか。 いや、気のせいではないはずである。 いくつかの観点から見ていこう。

まず、日程。

通常であれば、ワールドカップというのは6月に開始し7月に終わるようなスケジュール感である。 しかし、今年のワールドカップは違う。 11月に始まり12月に終わるというかたちである。

これは、開催国のカタールの影響である。 カタールでは、暑さが懸念されていたが、エアコンで空調を27度以下に保つという話で開催国が決まった。 実際にシミュレーションも行われ、開催が可能であるという結論も得ていた。

ただ、冷却に莫大な費用が見込まれており、一般客の場所まですべてカバーできないかもという問題が生まれ、涼しい晩秋から冬開催への変更となったわけである。

そもそもできるというから開催国になったというのに、やっぱりできないから時期変更しますというのは驚きである。 そんな感じに決めていいのか、という点ではFIFAの判定に疑問を抱く人も多い。

さらに、これに関連し、汚職も話題にあがっていた。 実際にプラティニというフランスのレジェンドも逮捕されている。 逮捕ではないという話もあがっているが、拘束はされており、厳しい状態となっている。 すこし本筋とは離れたところでゴタゴタが続きそれが存在の希薄感に繋がっていると思われる。

ほかにも、海外では労働問題みたいなものも話題に上がっている。 4,000人以上の労働者が怠慢な安全管理等で亡くなっているという話もあった。

つづいて、これが一番大きいかもしれないが、代表の人気である。

サッカーの日本代表戦というのは一時期はおばけコンテンツであった。 地上波で放映されればほぼかならずその年の視聴率ランキングに顔を出す。 出場できるかわからないヒリヒリしたワールドカップ予選、アジアの1位を決めるアジアカップ、普段戦えない強い相手との親善試合。 過半数とは行かないまでも、間違いなく多くの人が知っているコンテンツである。

しかし、今はサッカーはメジャーコンテンツとは言い難い状況にある。 まず、ワールドカップ予選も、放映権の高騰により地上波で放映できなくなった。 2022年予選などは、サブスクリプションサービスのDAZNがアウェイ戦の独占放映をしており、地上波では見られない。

地上波で見られないとユーザーへのリーチも厳しくなり、更に存在感が虚ろになっていってしまう。 その負のスパイラルに捕らわれてしまった。

昔に比べ、アジアでは滅多なことでは予選敗退しないくらい強くなったが、その影響で見られることも少なくなってしまったのかもしれない。

なんとこれは、次以降は更に人気が出なくなってしまう。 というのも、今回が32チームで行う最後のワールドカップである。 2026年に行うワールドカップでは、48人であることが決まっている。

アジアは8枠。今回の最終予選であれば、4位までに入ってればいいわけであり、そのまま当てはめると、4勝2分4敗のオマーンでも通過できる計算になる。 日本がアジアで五分になるというのは少なくとも今の時点では考えにくい。 絶対に通過できる予選となってしまうため、ヒリヒリ感が薄れてしまい、見られなくなってしまうのではないだろうか。

アジアカップはともかく、親善試合もいい試合が組めない。 というのも、ヨーロッパの国と親善試合を行うのがとても厳しくなっている状況がある。 UEFAという欧州サッカー連盟が、親善試合の代わりにネーションズリーグという公式試合を導入し、公式試合とし且つEUROと呼ばれているヨーロッパのカップ戦やワールドカップのヨーロッパ予選を兼ねるようになった。

こちらは公式戦となり、またサッカーで決められている国際Aマッチウィークをほぼ全て専有するため、ヨーロッパの国はそれ以外の国と試合が組めなくなってしまった。 国際Aマッチウィークというのはそれぞれのクラブの試合を中断し、代表活動のためにクラブの試合をやらないようにする期間のことである。

この影響があまりにも大きく、現状の日本代表のマッチメイクは同じアジア以外だと北中米や南米のチーム、アフリカのチームに限定されてしまう。 もちろんいい試合もあるが、選択肢が狭まるのは良いことではないことはたしかである。 日本代表がネーションズリーグに入るみたいな案もでているが、通ることはないと思っている。 これも解消されることがないであろう。

また、日本代表の評価も気にしなければならない。 現状の日本代表はハリルホジッチの解任に始まったいわゆるスポンサーなどへの忖度といった金とビジネスの問題を孕んでいる。

それだけにもとどまらず日本代表の強化方針であるジャパンズウェイによってサッカー有識者からの評価も低い。 ジャパンズウェイというのは、日本人の強みを活かし日本人としての闘い方を追求していくというものがあり、日本独自の育成やプレースタイルで戦っていくものである。

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聞こえのよい言葉を散りばめているが、言ってみれば選手側で判断させることが多い。 それは果たしてチームの強化となるのか。 微妙なところであり、もっとあるだろという話から評価も低くなっている。

地上波放送が減り、ライトファンが獲得できず、コアファンも離れているコンテンツ。 それが現在の日本代表であるように見える。

最後にサッカー自体が今の短時間で欲求を満たすようなコンテンツじゃないことがあると思っている。 現在は無料で楽しめるコンテンツが豊富で、更にその中で可処分時間の奪い合いが起きている。 もはやピークを早めに持ってきてコンテンツが選ばれるようにしているものも多い。

そんな中、無料で放映されることが少なく、また、45分x2の間見続けてその中でピークは多くても2,3度、ないこともありうるエンタメとなっているサッカーを選ぶのは誰であろうか。 もともとサッカーが好きな人ならなんとか選ぶかもしれないが、それ以外から選ばれるにはかなり厳しい。

もちろん、耐え続けた中最後に来る一瞬の大きさは計り知れないものがあるが、そのために待つ人は果たしてどれだけなのだろうか。

そういったコンテンツとしての弱点を抱えているサッカー。 ワールドカップが盛り上がらないのもそのあたりが影響しているのではないかと思う。

自分としては、サッカーは好きなスポーツなので盛り上がって欲しいのだが、現状を打破するには相当の何かが必要であるように思える。