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『されど僕らの幕は上がる Scene. 1』

要はさ、自分の気持ちに向き合うだけっていうか。考えてこたえが出るものばかりだったら、誰も困らないしね

7人の少年少女がシェアハウスで繰り広げる、和気藹々とした青春物語。読む前の印象としては、このくらいのものだった。しかし、そうではなかった。


テレビの企画であるシェアハウス。新メンバーとして選ばれた涼太は、明るいリーダー少年という設定を与えられ意気揚々と撮影に臨んだ。撮影が終わった後、憧れだったアイドルには「ゴミムシ」と呼ばれ、他の出演者も第一印象とは違っていた。皆テレビで見るような表の顔だけではない、裏の顔がある。 主人公は楽しい幻想を夢見ていたに違いない。そう思えるようなヘラヘラとした態度が前半では散見された。しかし、後半では目につかなくなってくる。それは成長というのか、はたまた元々持っていたものなのだろうか。

テレビでもよく似た企画がある。現実の人間の生活である以上、この小説以上に混みいった人間関係になっているのだろうか。もしかしたら、テレビで見たままの関係なのかもしれない。

形だけの関係が作中のテレビ画面からは映しだされている。それでは、内面は見えてこない。触れ合ってみないとわからないこともたくさんあるだろう。気づくこともたくさんあるだろう。大事なのは、触れ合ってわかったことに対してどう向き合うかだ。

理想が実現できる小説で、現実でも有り得そうなしがらみや心の闇を表現している。人は皆理想を体現できるわけではない。しかし、理想に近づくために努力することはしているのだろうと思う。最初に引用した一節が全てを物語っている。皆真剣に悩んでいる。そして、答えをだすために藻掻くのだ。

結局、最後までこの『シェアハウス』に集められた目的はわからなかった。ただ、意図はある。「Scene. 1」となっていることから分かる通り、まだ物語は続く。次からどうなっていくのか、目が離せない。