本『他人を攻撃せずにはいられない人』

この本は、キャッチーなタイトルに書かれているとおり、他人を攻撃せずにはいられない人やターゲットになる人について分析し、攻撃する人の呪縛から逃れるためのいくつかの方法について書かれたものである。

幸いなことに、自分は他人を攻撃せずにはいられない人とそこまで深い関係を持った記憶はなかった。

しかしながら、この本を読もうと思ったのは、Twitterなどでときどき流れてくる体験漫画や体験談で出てくるような攻撃してくる人が本当にいるのかということを知りたかったからである。

また、自分にそんな体験がないのは、もしかすると自分自身が他人を攻撃せずにはいられない人になっているからかもしれないとも考えた。 もし自分がそうだったとしたら、これまでの行動を無いものにはできないが、これからの行動を変えられるのではないかという考えも読む動機となっている。


さて、この本に書かれている他人を攻撃する人とは、主に攻撃によって他人の行動を抑制し、支配(コントロール)したい人である。 なぜ支配したいのかについては、4章の「どうしてこんなことをするのか」に、自己愛が過ぎ自分が絶対でありたいからというニュアンスで書かれている。

もちろん、ただ攻撃をしたい人もいるらしいが、支配することで自分の優位性をアピールし、いい立場に立ちたいというのがある。 自分を本来の実力以上によく見せたいからこそ、他人を下にすることで自分を上げるというわけである。 うーん、人間は罪深い。

そんな人は、まずはターゲットを決めたら、その人を不幸にしていくように攻撃する。 この本では、攻撃方法として、7つの武器を挙げている。 わからないふりをする、他人のせいにする、非難に動じない、疲弊させる、他人の価値を無視する、ズレを生じさせる、そして、罪悪感をかき立てる。

最終的には支配して自分の都合のいいようにしていくわけだが、その前に武器を使ってターゲットを不安な気持ちにさせ、反撃させないようにするらしい。 つまり、ターゲットとして狙われやすいのは弱くておとなしい人。 そういった人を攻撃し、疲弊させて意思をなくし、支配し操っていく。

これが、自分では意識せずに徐々に進行していくというのだから恐怖である。

特に、この本では罪悪感をかき立てることを何度も取り上げている。 一般論でよく言われるような、誰かが困っていたら助けろという話だったり、人を信頼して任せろという話だったり。 そういうのに反している点があれば目ざとく見つけ、それを根拠に攻撃し自分が悪いと思わせ、人の選択肢を奪っていく。

そうして、支配が完成するというわけだ。


ここまで読んだときに、少し自分にも思い当たる節もあった。 流石にコントロールまではされなかったと思うのだが、みんなやってるのにやってないの?といった話などで罪悪感を持ち、何かをした記憶がある。 これがエスカレートすれば、自分も苦しい生活を送っていた可能性があるわけなので、危ないところだったのかもしれない。

なぜエスカレートしなかったかを考えると、そればかりに気をかけられなくなったというのがあった気がする。 他にもやることができて、その人との接点が少なくなった結果、自然と消えていった。 まだ逃げ道があったというのが逃げ道になっていたというわけだ。

この本の最終章は、攻撃への対処法が書かれている。 相手を観察し、なぜ攻撃するのかを客観的に見ることで逃げる糸口を掴むのも対処法のひとつである。 自分が前に行った関わりをなくすという行動も項目のひとつとして書かれていた。

攻撃してくる人は変わろうとせず、また変わらないため、必然的にそこから逃げることが最適解となってしまう。 逃げられないとしても話さないことで、距離を置き支配の洗脳から離れていく。

クリティカルな解決法ではない気がして世知辛いが、こういった方法が適切らしい。 少し物足りなさを感じてしまうが、上手い逃げ方がこれしかないと思うほかない。


そういえば、Twitterでも所構わず人を攻撃(口撃)している人を見かける。 こちらの人たちは支配からはかなり遠い位置から見られるため、観察も容易だ。

さらに、SNSのいいところとして、強制的に距離を離れる「ブロック」もできる。 現実世界もそうなってればいいのだが、と常々思う次第である。

今は支配という状態から最も離れているため、客観的に読めたが、今後いつこういった目に合うかはわからない。 そのときに、対応できるように準備していければと思う。

また、読んだ限りでは自分は今はそうではないと思うが、自分に劣等感を感じるようになったときに、他人を攻撃せずにはいられない人にはならないようにしたい。 人を支配することなく、自分のことを信じ誠実に人と向き合っていければと思う。

そんな自分への戒めにもなる1冊だった。